3月19日、料理レシピ検索アプリであるクックパッドは新機能「レシピスクラップ」を公開しました。
この機能が多数の料理研究家から批判の声が上がり、それを受けクックパッド社がお知らせを掲載するなど、大きな炎上へ発展しました。
さらには生成AIを嫌悪する反AIと呼ばれる人たちが騒ぎ立て、それに対する反論のレスバが繰り返される状態となっています。
僕は生成AIを使っている側であり、生成AIに学習される側(インターネットで何らかの発信をしているすべての人がそうですが)でもある人間として、この問題に対する個人的な考えをまとめてみます。
「レシピスクラップ」の機能と批判されている点
まずは「レシピスクラップ」の機能を整理してみます。
- レシピが掲載されているページのSNSシェアボタンやページURL貼付でレシピを取り込み。
- 取り込んだレシピはクックパッドアプリ上で閲覧が可能。
- 毎週5件まで無料。課金すれば無制限。
クックパッドユーザーにとってはレシピのフォーマット統一・一元管理できる便利な機能です。
構造的にはノートへのメモ、ページの印刷、スクショ撮影 のような、個人利用の範囲でやっていたアーカイブの自動化。
超端的にすると自動レシピノートです。
この機能はURL先の情報をAIが自動で読み取り、材料や手順を整理するという仕組みで動いています。
批判の本質は取り込まれるコンテンツ制作側への搾取構造
この機能が使用されると、コンテンツクリエイター側のページアクセスが減少し収益性が低下します。
「レシピスクラップ」を使用すると、今までは ユーザーが再検索 or ブックマークから再アクセス などでページへの流入があったものが、クックパッドアプリ内で完結することになります。
クリエイターがWeb上に無料掲載しているコンテンツのほとんどは広告やアフィリエイトなどの手段で収益を得るビジネスモデルであり、これは自身のコンテンツにアクセスされなければ意味がありません。
つまり、コンテンツクリエイターの収益を下げつつクックパッドが利益を得る構造であり、批判は当然と言えます。
特に今回はクックパッドというレシピ検索アプリ、競合による搾取であるため宣戦布告のように見えてしまいます。
クックパッドはなぜこんな機能を実装したのか?
ここからは現在のビジネスモデルを踏まえた個人的な考察・推察になります。クックパッドが「レシピスクラップ」という批判必至の機能を実装した背景を読み解いていきます。
クックパッドのビジネスモデル
まずクックパッドがどのような方法で収益を得ているのか整理します。
- ユーザーに無料で大量のレシピを作成してもらう
- 検索機能を充実させる
- 殿堂入りレシピやランキングなどを有料機能として課金によって収益を得る
つまり、一般ユーザーの投稿であるため平均的なレシピの質は低いが、大量のレシピがあり、きっと求めるレシピもあるはずだが、簡単にレシピにたどり着くためには課金が必要。
というのがクックパッドです。
クックパッドは2022年時点で全体収益の71%が有料会員によるものであり、その後に広告事業を廃止しているため、現在では収益の大部分が有料会員によるものとなっています。
情報元:苦境「クックパッド」、年内3度目の人員削減 背景に競合台頭とタイパ重視
生成AIの台頭
ここで問題となるのが近年の生成AIの台頭です。
- Web上に公開されているページをクロール
- ユーザーが入力したテキストに対して適切なコンテンツを返す
- 基本無料で回数制限あり。課金で回数上限増加
これはクックパッドから見れば非常に驚異と言えます。
クックパッドと生成AIを比較してみます。
| 比較項目 | クックパッド | 生成AI |
|---|---|---|
| レシピの質 | 一般ユーザーのレシピ(低) | Web上のすべてのレシピ(低) |
| レシピの数 | 投稿されたレシピ(多) | Web上のすべてのレシピ(膨大) |
| 検索機能 | 高機能だが無料では制限あり | 入力内容から出力 |
| 課金 | 月額課金 | 無料は回数制限あり ※ |
| お気に入り機能 | あり | なし |
※ 1日に数度のレシピ検索では上限に達さないので実用上は無料です。
クックパッドの強みだったレシピの数と検索機能ですが、生成AIはそれを超えてきます。
もちろんクックパッドはレシピ特化のアプリなので、レシピとして見やすいレイアウト・写真が多くてわかりやすい・お気に入り登録して見返せる というメリットがあり、生成AIの完全下位互換というわけではありません。
今のところはですが…
クックパッドが考えた苦肉の策「レシピスクラップ」
なんとかユーザーを繋ぎとめる機能として実装されたのが「レシピスクラップ」でしょう。
「レシピスクラップ」は外部ページのコンテンツを取り込みつつ、アーカイブ化する機能です。
これは間接的にレシピの数をクックパッド内のレシピからWeb上のすべてレシピに拡大することになり、生成AIの優位性に対抗できます。AIを使ってAIに勝つ、です。
生成AIにはお気に入り登録のような「後で見返す」機能は弱い(workspace等と連携すれば可能)ので、クックパッドは Web上すべてのレシピを登録して見返せる自分だけのレシピノート として差別化する狙いでしょう。
このような強気な機能を実装できたのは、日本の法律上、レシピ(材料と手順というアイデア)には原則として著作権が発生しないため訴訟リスクが低いというのも関係しているはずです。
もちろん、倫理的に問題視されるのは覚悟の上でしょう。
勝手にコンテンツを持っていく生成AIに立ち向かいつつ、自分たちの強みを生かすにはこのような手法しか無かったのだと思います。
何もしなければほぼ確実に生成AIに淘汰されます。
批判はありますが、実際は生成AIよりかなりマシな手法です。
レシピスクラップは1度見たページからレシピメモを自動で作成する機能。個人利用の範囲かも?でも課金で稼ぐ気マンマンなので批判は当然。
生成AIはWeb上に公開されたページから勝手にメモを作り、勝手にメモを配る。一度もコンテンツの基ページに来ません。
楽観視できないクックパッドの状況
クックパッドは、レシピを投稿してくれる多くのユーザーがいて成り立っているものです。
「レシピスクラップ」機能の実装によってユーザーの反感を買い、ユーザー離脱とレシピ投稿数の減少。という自分の首を絞める結果になる可能性も捨てきれません。
また既に行われていますが、クックパッドのレシピを他者が流用することも正当化されるでしょう。
クックパッドはレシピが奪われていくのを見つめることしかできないかもしれません。
今回の炎上がクックパッドの想定の範囲内なのか気になるところです。
根本的な問題は生成AIと同じ「搾取構造」
所謂反AIと呼ばれる人たちが反応しているのは、手段が違えど「他所のコンテンツを利用して稼ぎ、コンテンツ制作側に還元しない搾取構造」という共通点があるためです。
「この機能ダメだよね?最初のアクセスすら無い生成AIもダメだよね?」
ということが言いたいのです。
あくまでもコンテンツ搾取はダメというのが先。だから生成AIもレシピスクラップもダメ。
これに対して「生成AIは関係無い」という反論が多いようで驚きました。
根本的には同じなのに…
生成AIが許されてる限り、他者のコンテンツにタダ乗りする企業は増えるでしょう。
そうしないと生き残れないので。
コンテンツクリエイターはどうすればいい?
根本的にはコンテンツタダ乗り・搾取構造に対する法規制を待つしかない思いますが、現時点で個人ができそうなものをまとめてみました。
法整備を求める
AIの進化は目覚ましく、法整備が追い付いていません。特に日本は欧米と比較して法整備が遅れています。
今後の法整備に向けて、おそらく大量のコンテンツを保有する新聞社や出版社等が矢面に立つかとは思います。彼らを応援しましょう。
また、影響力がある方ならSNSなどで問題提起してみるのもよいかと思います。
AIクローラーをブロックする
サイトを自前で持っていればAIのクローラーをブロックすることも可能です。
OpenAIやGoogleなど主要なクローラーに対しては効果がありますが、全てのAIクローラーを完全に防ぐことはできません。
既存のプラットフォームを使用しているなら対策は難しいと思います。
AIが作れないコンテンツを作る
AIが作れない質の高いコンテンツを発信することは常に意識しましょう。
質が高ければすぐに取って代わられることは無いでしょう。
ビジネスモデルを変更する
サブスク等の有料コンテンツ配信やグッズ販売など、クローラーが入れない領域で稼ぐ方法です。
かなりハードル高め。
個人的な感想
企業が守ってきたラインを生成AIが軽く超えてきたので、企業側も生き残るためにラインを超えるしかないのかなと思ってます。
つまりAIが止まらなきゃ企業も止まらない。クックパッドが諦めても失うものが無い新規企業などがやるしょう。
コンテンツクリエイター側にクックパッドは悪いが生成AIは関係ない。というスタンスの方がいるのは驚きでした。
その方のレシピも生成AIに聞けば出てくるんですけどね。こっちは大丈夫なのか。
もしくはあんまり興味が無いのか、国内企業じゃないから叩いても止まらないと諦めてるのか。
いずれ規制される問題だとは思いますが、生成AIが悪いのではなくコンテンツ搾取が悪い、というのは理解しておきたいところです。
僕も「どうせAIが持っていくんだろうな」と思いつつ記事を公開しています。
こんな質の低い記事で何言ってんだと言われるかもしれないが…
でもAIは使う。生き残るために。